フランス中に衝撃を与えた本

事故の後遺症で全身まひになってしまった青年が、自分の尊厳を守りたいと考え、また唯一の支えとなっている母の人生を取り戻したいという気持ちから出た心の叫び、それが、フランスのシラク大統領に向けた「僕に死ぬ権利をください」という言葉でした。
この言葉によってフランスの国民はショック、衝撃を受け、死という事に向き合うきっかけとなりました。
生きるという事、尊厳ある死とは何か、こうした難題に真正面から向き合った本、それが、「僕に死ぬ権利を与えてください」という本です。

目が覚めたら全身麻痺、その時あなたなら

突然の交通事故で目が覚めたら全身麻痺、体が全く動かないという状態になっていたら、あなたはどうするでしょうか。
まずは恐怖からパニックになるでしょう。
口も動かない、何も伝えられない、なぜこうなったのか聞くこともできない、目で人を見ることもどこにいるのかを確認する事も出来ない、こんな恐怖があるでしょうか。

動かせるのは右手の親指、痛みがあっても伝えられない、かゆみを感じてもかいてといえない、悲しくても寂しくても、誰にも伝えることが出来ない、涙も流せない、でも意識だけは辛いことにはっきりしている、こんな状況になったら?絶望という文字しか浮かびません。

何年もの辛いリハビリを行って、最終的に医師から「回復の見込みはありません」といわれて、それでも自分で死を選ぶこともできない、考えたくない、考えられない状況です。
しかし僕に死ぬ権利を与えてくださいという本を書いた著者は、たった一つ動く場所、右手の親指1本で、気の遠くなるような時間を費やして、この1冊の本を書き上げたのです。

最愛の息子が全身麻痺になったら

やっと20歳になった息子、これから恋愛して結婚、その先には孫が出来て幸せな生活が待っているだろうと思っていた矢先、息子が交通事故で全身麻痺になったら、考えるのは息子のこれからの事、自分が死んでからの事、それに息子の気持ちでしょう。
なんとかならないか、リハビリをしても回復が見込めないという状況の中、全身麻痺になった息子が唯一動かせる右手の親指で書いた願いが「死」だったら、母親として何を考えるでしょうか。
想像する事もできません。

しかしこれは現実に起きたことです。
安楽死を勧めることはたとえ大統領でも出来ない、フランスではこの本によって安楽死論争が巻き起こりました。
最終的に母は、息子の体内に挿入されているチューブに薬剤を投入、息子は母の手によってその希望がかなえられたのです。
何という悲しい出来事なのか、尊厳ある死とは何か、高齢化がこの先さらに進む日本でも、この本は衝撃を与え、死に対して深く考えさせられる本であることは間違いないでしょう。
現在、息子を安楽死させた母と、その死を手伝った医師に殺人罪による裁判が進行しています。