物的身体ケアの大切さを知る事もできる本

何かの事故や病気で神経がやられて、意識はしっかりしているのに言葉を発することもできず、自ら動くこともできないという状態になった時、自分だったらこの事実をどのように納得させることができるのだろうか・・・ふと、こんな恐怖の瞬間を考えたことがないでしょうか。

ロックトインシンドロームという病気は意識が鮮明で認知能力も保持される、でも、四肢麻痺になってしまうために話すことも体を動かすこともできないという状態になります。
目だけを動かすことができます。

この病気の原因は、脳幹の橋という部分への出血、梗塞などから起ります。
コトバも動きも封じられるというこの症状はALS患者さんに起る症状として出てくるものですが、ご家族にとっても患者さん本人にとっても非常につらい病気です。

このロックインシンドロームとなって亡くなられた母を支え続けたことについて詳しく知らせてくれている本が、「逝かない身体―ALS的日常を生きる」という本です。

同情よりも人工呼吸器が大切

こうした体が動かくなる患者さんを持ったご家族は何よりも精神的な負担がありますが、それよりも何よりも、患者さんを苦しめないために同情よりも人工呼吸が先、傾聴よりも身体の微調整が先という身体ケアだったと記されています。
川口さんという著者のお母さまがお亡くなりになった夕焼け空の表紙の本は印象的で、思わず手に取った方も多いと思いますが、非常に死や生きるということに対して、切実になる治療や対処の仕方が印象に残ります。

実際にこうした重度の介護が必要な患者さんを持った人じゃないと、こうした文章は書けないと思いますし、また非常に読みやすく、元々指導教官であったという立場に沿った本になっています。

自分自身の頭がおかしくなりそうだった

著者が切実にいう、自分自身の頭がおかしくなりそうだったという介護、体も動かすことが出来ない言葉も発する事が出来ないという家族の介護は、ジレンマの連続だったと予想されます。
しかしこの著者は理想主義、完全主義を消して、運命に身をゆだねてみようと思った所から、身も心もはれ、病人に期待をしなくなったといいます。

治ればいい、でも治らないならこのまま長くここにいていいと考えるようになったこと、それが、いつしか病気をしている母にも見守ってくれているという感覚になり、落ち着いた毎日を取り戻すことにつながったといいます。
お子さんについても私の思い通りにならなくても、私の子供でいてくれたらいいという感覚を持ったといいますが、そこまでの葛藤やお母様に対する看病の様子は、体が動かない意思表示が出来ない患者を持った家族の苦労が伝わってきます。